『銀河鉄道の父』@配信

NZMの第2部の記事を書いている途中ではありますが、

ちょっとまだ凪様ショックから立ち直れず続きを書けるテンション

ではないのでまずは先にこちらを。

(なぜならNZMに時間がかかりすぎるとその他の公演の

記憶が薄れていってしまうからです。笑)

 

大空ゆうひさんのご出演されていた

銀河鉄道の父」

配信にて拝見させて頂きました!

 

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舞台「銀河鉄道の父」

新国立劇場 小劇場

2020年10月15日(木)~10月22日(木)

 

原作 門井慶喜銀河鉄道の父』(講談社文庫)
演出 青木豪
脚本 詩森ろば

出演者:的場浩司 田中俊介 栗山航 鈴木絢音 大空ゆうひ ほか

今作は原作の第158回直木賞受賞作『銀河鉄道の父』(門井慶喜/講談社文庫)を第43回日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞詩森ろば(映画「新聞記者」)が舞台脚本化し、劇団四季の「恋におちたシェイクスピア」演出、新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」へ脚本提供、音楽劇「マニアック」の脚本・演出など、振り幅の広い活躍をする青木豪が家族の会話劇として紡いでまいります。
政次郎を中心とした家族の生活を濃密に時にはコミカルに描いていきますのでご期待ください。
(公式HPの紹介文)

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 「銀河鉄道の夜」の作者である宮沢賢治の家族たちの物語。

父を的場さん、母をゆうひさん、賢治を田中さん、

賢治の妹を絢音さん、弟を栗山さんが演じました。

 

宮沢賢治といえば若くして亡くなったことは周知の事実で

同じように妹のトシも若くに亡くなっていて

そこからすると悲しい結末になることはわかっていて

もちろん大分泣かされもしたんですけど、でも

それだけじゃなくて悲しいだけじゃなくて

微笑ましかったり温かかったり情けなかったり

そんな家族のいろんな側面を描いたとても素敵な物語でした。

 

 

物語の始まりは父・政次郎の葬儀の場面から。

死後の世界で政次郎が賢治と出会うところから

お話が展開していきます。

 

ここの場面でですね、ゆうひさんは夫を送るおばあちゃん姿で

出てくるんですけど、最初「え?これ誰?ゆうひさん?」って

わからないくらいで驚きました。

声色とか姿勢とか話し方とか、もう本当におばあちゃんで

なんかさすがだなって。

しかもこれまた流暢な東北弁で。

(どうしても頭を過る「壬生義士伝」・・・)

 

父と子の思い出話から、子供時代へと物語は

移っていきます。

 

子供時代は役者さんが子供の人形を操っての演技なんだけど

これがなんの違和感もなくて、本当にその人形たちが生きて演じて

いるように見えてくるから不思議。

 

兄妹並んで食事をする様子

祖父と父の商売の様子

子供たちが学校へ上がり弟が生まれ・・・

っていう家族のいろんなエピソードが繰り広げられていきます。

 

決して感動的なものや素晴らしいものばかりじゃなく

賢治がなぜか石ころ拾いに夢中になって呆れてしまったり

トシが兄と同じことをしたいあまり入学式に一緒についていこうとしたり

賢治の入院に強行付き添いした父の方が病気になったり

なんか笑っちゃうような微笑ましいようなそんな日々が描かれていきます。

 

そんな中でも、トシがお兄ちゃんのこと大好きで賢治も妹のことを

すごく可愛がっている様子は本当に微笑ましかったし

入学式の日の賢治に母が袴を履かせてあげているシーンとかも

温かい日常が溢れていて素敵だったなー。

 

 女子含め、子供を3人とも進学させるなんて当時としては

裕福なご家庭だったこともわかります。

だって商売してるおうちなんだから、家業を継ぐなら

進学させてないですよね、きっと。

 

 

トシ役の絢音ちゃんがすごく通るいい声をしていて

台詞も聞きやすくて素晴らしかったですね。

 

あと、素晴らしいといえば、セット転換はなく、

ずっと同じセットにも関わらず、それを上手に使って

巧みに場面転換をしていて、繋ぎ方などにダレることも

違和感を感じることもなかったこと。

 

 

子供が巣立っていった後の政次郎・イチ夫婦のやり取りも

可愛くて素敵だったな。

賢治が手紙をよこすたびに何か新しい事業を始めていて

「なのでお金を送ってください」っていう内容に

結局「送ってやれ」ってなっちゃう政次郎さんが、厳格であるはずなのに

なんだかんだ息子が可愛くて甘やかしちゃうところが可愛いし、

それもどうなのかと思いつつもはいはいって受け入れてる

イチさんも可愛くて、微笑ましい。

 

何の話の流れだったか、また賢治からの手紙に驚く内容が書いてあった時の

イチさんの「はえー?」みたいな驚嘆の台詞が可愛くておかしくて

つい笑ってしまった。笑

 

 

祖父役の俳優さんが、これまた巧くて、

入院先の病院の先生から賢治が進学した学校の先生とか

お1人でいろんなお役をこなしていてさすがでした。

 

メインキャスト家族5人以外にこの俳優さんとあと女優さんがお2人

出演されていて、そのお2人も何役もこなされていて

たった8人とは思えない層の厚い座組だったなと思います。

 

 

あとね、末の弟の清六くんが信じられないくらいいい子で!

ちょっと変わり者の家族の中で、至極まともというか。笑

それでいて家族思いでね・・・泣

最初の葬儀のシーンでもお母さんに付き添っててくれるんだよね。

 

 

トシが女学校を卒業する頃になると、ゆうひさんの声色がまた
子供が小さい頃とももちろんおばあちゃんとも違って、

これまたさすがだな、と。

 

 

賢治が物語を書くようになったのはトシの影響なんだと思うけど

そのトシの「待ってたのは俺ではねぇ。
たくさんのお話がお兄さんの中で文字になるのを待っておりあんした」

みたいな台詞がとても素敵だった。

幼い頃から兄が聞かせてくれるお話が好きだった妹。

妹が喜んでくれるからいろんなお話を作った兄。

 

 

かなり辛かったのはトシの遺言が「息を存分に吸いたい」

だったこと。肺結核なんだよね?

想像するだけで苦しくなる。

でも結核って今でいうコロナのような感染症なのでは?

家族に囲まれて息を引き取ったけれど、本来なら隔離されたのでは?

っていうのはちょっぴり疑問。

 

 

トシが亡くなって、そして賢治も亡くなるラストは

結末を知っていてもつらい。

印象的だったのは、最後まで自分で息子の世話をしようとした

政次郎さんに対してこれまでずっと従ってきたイチさんが、

最後は自分にさせてほしいと頼むところ。

幼い頃から賢治が体調を崩したり入院したりするたびに

政次郎さんはすっ飛んでいって賢治の看病をしてきた。

だから、イチさんはずっと看病出来なかった。

政次郎さんに譲ってきた。

だから最期くらいは母として務めをさせてほしい

っていうこの嘆願には胸がいっぱいになりました。

 

 

そして再び死後の世界。

自分は何も出来なかった、孝行出来なかったと悔やむ賢治に知らされる事実。

自分の書いた作品たちが、彼の死後に広まって多くの人に愛されているのだという事実。

 

冒頭で、死後に会えるのは1人だけ、という説明があった時に

「確か妹も早世してるはずなのになんで賢治だったんだろうな」

って実は少し思ってしまったのですが(だって若くして兄より妹が

旅立っていたら父親ってそちらの方が思いが強そうな気がして)

でも、これを、この事実を伝えたいっていう思いが政次郎さんの心の中に

強くあったからなのかな?ってそう思ったらなんだか納得できました。


そしてその事実を聞かされた賢治が、

「自分が有名なことよりジョバンニやカンパネルラが広く

愛されていることが嬉しい」的なことを言うのが本当に優しい世界だった。

 

 

この作品に絶えず流れている、悲しいだけじゃなくどこか

微笑ましく温かい空気をすごく表しているよう。

 なんかもっと号泣の感動物語なのかと身構えていたけれど

心温まる家族の物語を見た、そんな印象の素晴らしい作品でした。

 

 

そしてなんと。

配信には限定のアフタートークまでついていて。

(わぁーい!お得感満載!!)

 

ご家族5人でのトークだったのですが、

お役を離れてかなりくだけたトークになっていて

皆さんの仲の良さとか流れる雰囲気の良さがわかる

楽しい時間でした。

 

座長の的場さんが本当に座組をまとめるお父さんのようで

力強く引っ張っていってくれつつも、1人1人を気にかけて

くださる優しさも垣間見えて素敵でした。

 

ゆうひさんのことを「ゆうひ!」って呼んでくださるのも嬉しい。

 

最後も的場さんの後にゆうひさんにもご挨拶させてくれたし。

で、なんだかんだやっぱりゆうひさんご挨拶上手いしね。(好き)

 

ただ、トークの内容としては、人形の指が壊れて飛んだ話とか

(しかもそれが食事の膳の中に転がってたとか)

お稽古場のゆうひさんがダメ出し聞いてる最中に台本に

落書き(ドラえもん?の新キャラ?)してる話とか・・・

なんかもうグダグダで・・・!

でもそこも含めて楽しい人たちでした。

 

 

いつも思うけど、ゆうひさんのお仕事選びのセンスがすごく好き。

ゆうひさんが出てるから、って理由だけで観に行っても、

またまた素敵な作品に出会えたなぁって思わされる。

でもそれって、そんなお仕事にお声がかかるようなお仕事をゆうひさんが

ちゃんとしてきてるってことなんだから、誇らしくもなるよね。

 

 

あれもこれも、全部を観に行くことは出来ないけれど、

それでもやっぱりこれからも舞台上で演じるゆうひさんの姿を

見ていきたいなぁと、毎度のように思ったのでした。以上!