舞台『マーキュリー・ファー』

続きまして。

 

大空ゆうひさんご出演の

舞台「マーキュリー・ファー」

観に行ったお話。

 

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「マーキュリー・ファー」

 

【作】 フィリップ・リドリー
【演出】 白井晃
【翻訳】 小宮山智津子

 

【出演】 吉沢亮 北村匠海
     加治将樹 宮崎秋人 小日向星一 山﨑光
     水橋研二 大空ゆうひ

 

【公演日程】

2022年

1月28日(金) ~2月16日(水)  世田谷パブリックシアター

2月19日(土)20日(日)     まつもと市民芸術館 主ホール
 2月23日          りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

2月26日(土)27日(日)     兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
3月2日(水)         神戸文化ホール 中ホール

3月5日(土)6日(日)      刈谷市総合文化センター 大ホール
3月10日(木)11日(金)     福岡市民会館・大ホール

 

『マーキュリー・ファー』は、イギリスの劇作家フィリップ・リドリーが2005年に書き下ろし、

日本では2015年に白井晃の演出によりシアタートラムで初めて上演した作品です。
これまで白井が世田谷パブリックシアターで演出を手掛けたリドリーの作品は5作に上り、

いずれも斬新な劇場空間と、衝撃的な演出で高い評価と話題を呼びました。

リドリーは白井が最も触発される劇作家だと言っても過言ではありません。

その中でも『マーキュリー・ファー』はその他の作品と比べ、

より過激な表現、より挑発的なセリフが次々と繰り出される作風で、

極限状態に置かれた人間の残酷さが描かれています。

暴力と略奪がはびこる荒れ果てた世界であぶりだされる

人間の本質を世の中に鋭く突きつけるとともに、

生きること、愛することを渇望する人間の美しさが描かれた『マーキュリー・ファー』。

初演時には観客に大きな衝撃を与えました。

今回は劇場をシアタートラムから世田谷パブリックシアターへと移し、

およそ7年ぶりに再演いたします。
過酷な状況下で生きる兄弟役に挑む、吉沢亮北村匠海 を含め

魅力的な俳優陣の共演に、是非ご期待ください。

 

ストーリー
ボロボロの部屋に兄弟がやって来る。

パーティの準備にかかるが、そこに1人の男が突然顔を出し、

「バタフライ」が欲しいので手伝うと言う。

しばらくするとローラと呼ばれる美しい人物が現れる。

そしてもう1人、このパーティの首謀者らしき男と謎の婦人がやって来る。

彼らはパーティのためにそれぞれの役割を、

異常なほどの饒舌な会話を交わしながら行う。

やがて、パーティゲストがやってきて、パーティプレゼントが用意されるのだが、

パーティプレゼントの異変により、パーティは思わぬ展開に…

 

『マーキュリー・ファー Mercury Fur』 | 主催 | 世田谷パブリックシアター

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

2015年初演時に大変話題になった作品で

今回の再演も発表時から大きなニュースとなっていました。

 

そもそもフィリップ・リドリー氏の原作が

発表時から過激で暴力的な表現があることから

衝撃作扱いだったようですね。

 

 

私は疎いのでそんなあれこれは存じ上げなかったのですが

白井晃さん演出の作品にゆうひさんがご出演されるというのは

大変楽しみでありました。

 

 

で、実際劇場で拝見したわけですが。

 

 

感想は……書かない方がいい、

っていうより書けないっていうか

なんて書いたらいいかわからないんですよね…


私レベルでは咀嚼出来ないポイントばかりで。

 

 

そして今(2022年)のこの世界情勢で

この作品を見るっていうのはさぁ、もう…


食べるために縄張り求めて他民族と争ってた時代とは違って

現代の戦争はそれによって儲かる人が絶対裏にいるんだよねー。

なんてことも思ったり。

 

あと、決して他人事ではなく、

いつ自国に、自分に降り掛かってもおかしくない今、

自国の首相が大嫌いなAじゃなくて本当によかった、とかも思ったり。
それ以外の人は、Aよりマシの1点のみでも推せる。笑

 

 

まぁそんなことは置いといてですね。笑

 

以下、さらっとですが内容に触れております。

お気を付けて。

 

 

まず最初に登場するのは

吉沢亮くん演じるエリオット(エル)

 

続いて北村匠海くん演じるダレン

エルの弟

 

兄弟らしい2人が見知らぬ部屋を訪れて

何やらパーティーの準備をするらしい

 

最初はしばらくこの2人の場面なんだけど

暗くてセットもよく見えないし

台詞も実はよく聞き取れない

 

 

2人が舞台演技に慣れてないからかなぁ、

それとも私が設定を理解出来てないからかなぁ、

なんて思いながら場面が進んでいきました

 

 

 

吉沢くんエルは温度低めでスタートしたけれど

ラストには素晴らしい熱演で。
後半は感情が昂っても台詞が聞き取れるようになってた。


大河ドラマ終わりで挑んだのがこの作品て

ものすごい挑戦だと思うけど、

素晴らしい役者さんだなと改めて認識。

私は完全にエルに感情移入して見てた。

 

 

対する匠海くんダレンは

最後までぴゅあぴゅあだった。

可愛い。愛しい。

さすが歌い手だけあって透明感のあるいい声。

そして初舞台だなんて思えない居住まい。

 

 

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次に登場するのが小日向星一くん演じるナズ


「バタフライ」をいつも使ってて

それをエルから買ってる子


ストーリーをかき回す子

 

ナズもパーティーの準備に加わるんだけど
そこに楽しさは感じられない

 

しばらく意味のわからない会話が続くけど

最初に設定が説明されず少しずつわかってくるから
聞き漏らさないようにするにかなりの集中力を要する

 

「バタフライ」はどう捉えたらいいのかな

私は一種の幻覚剤みたいなものだと認識してました

 

 

この小日向くんがね、ナズがね

とっても印象に残りました。

まず第一に上手かったし

このナズっていうキャラクターが本当に

愛すべき存在で。

前半は仲間になってパーティーの準備してたり

ダレンと仲良くなって男子トークしてて

だんだんと愛着のわいてきた彼が

後半で新しいターゲットにされて被害に遭っている姿、

悲鳴を上げて逃げ惑う姿に目を背けたくなってしまった。

同じようにエルとダレンも苦しかったと思う。

でも、じゃぁ自分が代わりになるか?っていうね。

それ以外に選択肢はないわけでね。

ごめんね、ナズ・・・ってみんな思ってたよね。

 

 

 

次の登場はローラだったかな?宮崎秋人くん

 

パーティーの準備にくる。

あ、この子は仲間なんだね、っていうね。

 

とっても綺麗な男の子で、エルの恋人。

自分の理解度の低さの問題だと思うんだけど、

ローラの性別をどう理解したらいいのか最後までわからなかった。

宮崎くんの性別の通り、男の子でエルの恋人っていう

そのまんまの解釈でいいのか、

それとも男の子が演じているだけで女の子の役なのかな?

ま、いっか。どっちでも。

 

ローラの役割は「パーティープレゼント」を

飾り付けることなんだけど、

その「パーティープレゼント」がローラの連れて来た

生身の人間なんだから不穏さが増すよね。

飾り付けるっていうか、

着替えさせてヘアメイクとか?そういった準備。

 

 


「パーティープレゼント」役は山﨑光くん

 

プレセント役、ってさ、何?って感じだよね。

もういろいろおかしいんだよ。

人をプレゼント=物扱いするなんて

安っぽい二次小説の「プレゼントはあ・た・し」っての

くらいにしといてほしいんだよね。

 

っていう怒りがふつふつと込み上げる。

 

まぁでも彼はプレゼントにされるために連れてこられたんだよね。

さっきからみんなが口々に言ってる

「パーティーゲスト」って言う人のために用意されたんだよね?

 

 

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続いて「パーティー会場」に現れるのが

スピンクス役加治将樹さん

お姫様役ゆうひさん

 

スピンクスはローラのお兄さん。

 

この加治さんのね、

安定感が半端なかった。


かっこいいし上手いしさ。
物語のラストへ向かって

暴力的で激しい面もあるけれど

兄弟のことも妹のこともお姫様のことも、

みんなまとめて包み込んでくれているような

そんな温かさとか包容力を感じさせる役だった。

 

いろんな意味で「普通」じゃ生きていけない世界

「狂ったこと」しなきゃ生き残れない世界で

どうやったら自分たちが死なずにすむのかを考えて

多少力づくでもみんなを引っ張っていってくれる。

 

 

パーティー会場に見知らぬナズがいて、

兄弟(ダレンだけだったかな?)から

仲間に入れたいって言われた時のスピンクスの

 

 

ピラミッドの中のどこにファラオがいるのか

その位置はわずか数人しか知らない

でもその数人はファラオと一緒に埋められる

そういうことだ

 

っていう話がなぜだかすごく心に残って。

 

知ったからには逃げられない。

知るとはそういうこと。

 

パーティーの準備にナズを参加させるってことは

もうナズもそれから逃げられなくなるってこと。

 

結果としてパーティープレゼントが

プレゼントとして使えなくなって代わりに

ナズがプレゼントとして差し出されることになるんだから

あの時のスピンクスの言葉はその通りだった。

仲間に入れなければナズは被害に遭わなかった。

 

ってことだよね。

 

で、パーティー開始前にそんなやり取りがあるから

これから開催されるパーティー

かなりヤバいものだってドキドキするよね。

 

 

 

お姫様のゆうひさん。

みんなから「お姫様」って呼ばれてるの可愛い。(←ファン笑)

 

今日はこれからお姫様も来ると聞いて動揺する兄弟。

 

ダレンがパーティーの準備で薔薇の香りを撒くんだけど

それはお姫様が来るって知らずにしてるんだけど

後から想定外に現れたお姫様がその香りを喜んでるの可愛かったね。

 

 

私は事前情報でゆうひさんの演じるお姫様が

「兄弟の母」であることは知っていたけれど

お姫様が遠い意識の中にある息子のことを語り、

そしてダレンが幼き頃の母の記憶を語る。

ここで関係性がわかるようになってるんだね。

 

でも、私が大切な台詞を聞き逃しただけなんだろうけど

この母息子とスピンクスたち兄妹との関係性は掴めなかったな。

ただ単にエルとローラが恋人同士だからだったのかな?

 

ゆうひさんのお姫様は、もう視線の定まってない感じが

ヤバい人のそれで、そんなとこも巧いよなぁと思ったり。

声色が程よい中音なのもいいんだろうな。

「バタフライ」によってもう誰が誰だかわからなくなってるんだろうに

ずっと「パパ」を探し続けていて、その「パパ」を呼ぶ声が

すごく耳に残ってるし、「パパ」を求めるたびにスピンクスが

それに応えてあげるの優しいけどちょっと共依存なところもあるのかな。

(スピンクスは誰かに頼られることへの快感、的な)

 

あとね、もうほぼ廃人ぽくなってても

記憶は曖昧になってても

息子への愛情は彼女の中にしっかり残ってるんだな、って

思えて、嬉しさと哀しさが同時に押し寄せて来た。

たとえ目の前にいるのが息子だと認識できてなくてもね。

 

 

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で、最後に登場するのが

パーティーゲスト役水橋研二さん

 

間違いなく1番ヤバい人。

ヤバヤバのヤバ。

 

こういう人がいるんだよね、実際。

 

水橋さんのヤバさとキレ方、

とんでもないけど素晴らしかった。

 

お金も権力もあって、

だから自分のためのパーティーを開催できる。

彼の元には情報も集まって来る。

パーティーの開催を早めたのには理由がある。

早く逃げないといけないことを彼は知っている。

 

スピンクスたちはパーティーゲストに

言い方悪いけどすり寄ってるおかげで

情報のおこぼれをもらえる。

それがなきゃこのままこの街にいて

きっとそのまま何が起きたのかわからないまま

死んじゃうよね。

知ってる人たちだけが逃げた後のこの街で。

 

 

バタフライ的なものが人を狂わす世界。
戦争によって退廃した世界。


それによって得をする誰か
金で自分の欲望を叶えられる人
それをして生きている人
それに従わないと生きていけない人



クライマックス

 

爆撃音や発射音が響き渡り

血まみれになって逃げ惑う人や

殴り合う人

罵り合う人

 

 

なんだかもういろいろと重くて辛くて

心が深く沈み込んでいく

 

 

そんな中救いだったのはいくつかの美しい場面

 

エルとローラ、

スピンクスとお姫さまがキスを交わす場面

 

 

そして

ラストの兄弟2人の退廃的な美しさ

 

 

あの兄弟の未来はどうなっただろう

解釈は何通りもあるんじゃないかと思う

 

でも、私は、少しでも光を感じる未来であってほしい

 

彼らはどこかで生きてる

肩を寄せ合って、でも力強く

 

そう、思いたいです

 

 

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まぁしかし。

ゆうひさんを追っていると

自分から積極的に選ぶことはないであろう作品を観劇する機会が生まれて

それがまた面白かったりもしますよね。

 


私が次にゆうひさんの舞台を観られるのはお勢断行だけれども、

それもまた楽しみになりました!

 

 

 

以上、「マーキュリー・ファー」観劇メモでした。

 

 

お次は月組さんの「ロマ劇」「FULL SWING!」について!